【就活_製薬メーカー】企業研究者とアカデミア研究者の違い

仕事

こんにちは。しまうま君です。
今回は就活生のための参考記事「企業研究者とアカデミア研究者の違い」についてです。
「待て待てしまうま。研究者の違いってどゆこと?意味不明なんですけど。」と思われるかも知れません。確かにどちらも「研究者」ですが、違いがあるのです。
では、どういったところが具体的に違うのか。
この記事を読んでくださっている大半は大学で研究をされている就活生の方々だと思いますので、企業研究者に焦点を当ててお話して行きます。

では、早速行ってみましょう!!

研究者に必要とされるもの

まず大前提として、当たり前の事ですが、製薬メーカーは「会社」です。薬という製品を研究開発・製造・販売し、利益を出すことで成り立っています。つまり極論を言えば、いくら研究開発の過程で素晴らしい発見をし、素晴らしい論文をIF(インパクトファクター)の高い雑誌に投稿出来たとしても、結局薬にならなければ会社としてはマイナスなのです(もちろん、いち研究者としては素晴らしい功績であり、それが新たな薬の開発へ繋がることもあります)。

「コスト意識」という言葉は聞いたことがあると思います。会社で働く場合はどんな業種でも当たり前の事ですが、企業の研究者も「コスト」を優先順位の高いところに置いて研究をしています。
製薬は他の製造業と比べて、製品当たりの利益率が高い反面、売上高に対する研究開発費の割合がかなり高いです。ひとつの新薬を生み出すのに、数十億~数百億円もの資金を投入することとなります。研究開発に携わる人たちがそれぞれコスト意識をもち、仮に1%のコスト削減をするだけで、とても大きな額の費用を削減出来ることになりますね。

余談ですが、私が大学時代に所属していた研究室は幸せなことに研究費が比較的豊富にあったため、企業研究者になるまでは、研究に係る「コスト」については正直微塵も考えたことは無かったです…(新しい備品をバンバン購入。高額な試薬も教授に相談しないで買う。溶媒は使い捨て…本当、恵まれた環境に感謝しかなかったです。)

また、製品になるまでに要する時間も他の製造業と比べて圧倒的に長く、新薬の場合は10年~20年もの時間を要します。冒頭でお話したように、結局薬にならなければそれまでの研究は無駄、会社にとっての損失になります。すでにお分かりかと思いますが、薬にならないと判断するまでに要する時間が長くなればなるほど損失は大きくなっていきます。つまり、薬にならないならさっさと「見切り」をつけて次のテーマに行った方が良いよねって話です。
アカデミアでの研究で論文を出すとき、チャンピオンデータと呼ばれるような一番良いデータを載せたりするような事もあるかも知れません。企業での研究では、良いデータばかり見て判断出来ません。むしろ、良くないデータが出たならそれについてしっかり考察し、次に進めないものはすぐやめるという「見切り」の速さも企業研究者には必要とされるスキルとなります。良いデータであれ悪いデータであれ、しっかり向き合いメンバーと話し合いながら今後について判断していくのです。

アカデミアでの研究は、修士課程で卒業して企業に就職するとなるとそもそも研究期間自体そんなに長くないので、今のテーマを見切って他のテーマに変えるなんてこと自体そんなに無いですよね。(ころころテーマ変えてたら、まともな修士論文なんて書けやしない。笑)

企業での研究は団体戦

大学での研究は、基礎研究が多いということからも、基本的にひとつのテーマには個人または多くても数人程度が携わることになると思いますが、企業での研究は、ひとつのテーマにとても多くの人たちが携わり団体戦で進めていくこととなります。当たり前の話ですが、ある研究分野だけ一生懸命やっていても薬は作れません。シード化合物選定、合成、薬効評価、安全性評価、薬物動態、製剤といった風に様々な研究の過程を経ることで薬は作り上げられていくのです。しかもこれはあくまで非臨床研究での話。薬が世に出るまでには、さらにここから臨床研究(治験)→申請/上市(薬事)といったステップを踏むこととなり、非常に多くの人たちが携わることとなります。

話が大きくなり過ぎたので非臨床研究での話に戻りますが、企業での研究は、様々な研究分野の研究者たちが集まって団体戦で進めていくということがお分かりいただけたかと思います。企業研究者は、日々の研究活動で様々な知見を持った研究者たちと交流し、データを出し合い検討し、患者さんが必要とする薬を作り上げると言うひとつの目標に向かって進んでいくのです。私も会社で研究所にいた頃(薬物動態の研究チームでした)は、毎日のように合成チームのところへ足を運んで話し合っていた時もあれば、薬効や安全性を評価するチームと集まって各チームのデータを出し合い検討し、化合物について総合的な評価をする時もありました。

企業研究者は、日々様々な情報を取り入れることが出来て、視野が広くなり多角的に物事を考えられるようになっていくのです。これは決してアカデミア研究者を悪く言っている訳ではありません。企業研究者とアカデミア研究者の性質上の違いを述べているまでです。就活をしながら、将来自分が企業研究者の道に進むのかアカデミア研究者の道に進むのか迷われている方は、こういったことも参考にして考えてみるのも良いかも知れませんね。

研究者の見る先

最後に、研究者の見る先(ゴールや目標みたいなもの)に何があるかの違いについてお話します。
まずアカデミアの研究者が見る先は、ある特定の分野におけるある事柄を深く探求し、革新的な研究成果を得ることで、論文投稿、学会発表をすること。そしてさらにはノーベル賞といった名誉ある賞を受賞することだと思います。

一方、企業研究者の見る先には、製薬に限らず必ずその製品の消費者がいます。つまり、製薬メーカーの研究者の見る先には、何らかの病気で苦しんでいる患者さんがいるのです。もし、自分が携わったテーマが上手くいって、その薬が世に出ることとなっても、その薬を使用した患者さんから直接お礼を言われることなんてまずありません。でもその薬が、何万、何百万、疾患領域によっては世界で何千万人もの患者さんの笑顔に繋がっていることは間違いないのです。それってとんでもなく凄いことだと思いませんか?

ここまで良い事ばっかり書いているように思われるかも知れません。確かに、企業研究者には辛いこともたくさんあります。テーマが突然没になったり、性格の合わない人とも連携して研究を進めなければならなかったり、自分が正しいと思う意見を上司に話しても全く相手にされなかったり…
ただそれは会社に勤める以上、避けては通れないことです。ストレスフリーで自分のやりたいようにやってお金を貰える事なんて、ほとんど無いです。
ただ上述したように、製薬メーカーの研究者はそういった辛いことも乗り越えられるぐらいのやりがいをもって出来る素晴らしい仕事だと私は考えています。

最後に

さて、企業研究者とアカデミア研究者の違いをざっくりとご理解いただけたのではないでしょうか。
今回紹介した内容を自身の性格や研究に対する考え方と突き合わせることによって、自分がどちらに向いているのか見えてくるかも知れません。皆さまの将来の選択の一助になれば幸いです。

ではまたっ!

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